OLED
有機ELによる展示照明/よりドラマティックな展示環境へ
美術館、博物館の展示照明はこれまで、充分な選択肢が有ったとはいえない。
その多くは、あらかじめ建物側で用意された照明器具で展示品を照らすと言う以上の機能は要求されてこなかったし、また要求出来るほどのバリエーションが用
意されていなかった。
王冠も本も着物も骨格標本も、本質的にそれほど違わない照明によって照らされてきた。
ここでは有機ELの薄さ、面光源であること、調光が可能であることなどを活かして、これまで非常に難しかった照明方法(例えば正面光)を可能にし、更には
展示品ごとに理想的な照明を用意するためのシステムを提案したい。
システムは上面3枚、側面5枚、底面1枚の有機ELパネルからなり、図@に示すように側面1枚が欠けている六角柱のような形をしてい
る。 これらのパネルのオン/オフや明るさ、時には光色を個別に制御することで、それぞれの展示品の趣旨に沿った照明環境を簡易に作り出せるし、また、複
数の照明面の組み合わせにより照明の可能性はほぼ無限ともいえる。
立体作品は本来、近接距離からの点光源ではなく、太陽光の下で見ると最も美しいものが少なくない(例:ミケランジェロのダビデ像)。 自然光の再現性とい
う点でも、面状光源は立体作品の照明光源として優れている。
また、透かしの強調などのために作品後部から照らすような場合、これまでは移動可能なライトを後部に配置することが一般的であったが、これらに比べて有機
ELの面光源は見るものにとってグレアの発生などがなく、ライトボックスのような安定した光を提供できる。
理想はこのシステムに沿った新しい展示場所を作ることではあるが、有機ELの最大の利点である薄さは、既存の展示施設にこのシステムを埋め込むことも可能
にする。
これにより展示照明は単に「見えるように照らしている」というような現在の悲観的な状況から大きく飛躍し、「本来の照明方法」「作者の意図に沿って」「学
芸員の創造性」など新たな観点からの展示方法(図B)を創出するだろう。
【設計】 橋本建築スタジオ



