til t (ティルト)

現在最も流通している照明の壁スイッチは、シーソーが横に倒れたような仕組みで、水平に軽く力を加えることでON/OFFを切り替えら れる。これは歩きな がら操作するのに都合の良い機構であるが、この手軽さが、本当は不要な時までも無意識にスイッチをオンにさせるのではないか。この「無意識の動き」を意識 下に持ち込むにはどうすればよいでしょうか。


エコロジーについて考える時、私を含めて多くの人が「物のあり方」をまず思ってしまうのではないか。例えばそれはリサイクル原料などの、商品ができている 素材のことであったり、運送にエネルギーを必要としない地場産材であったり。
今日、スーパーやデパートで売っている商品のほとんどに何らかの言葉でエコロジーがうたってある。定義もあいまいで、便利な言葉である。エコロジーは信念 というよりものづくりをする際の免罪符みたいになってしまっ ているのだ(再生材の利用、プラスチックの不使用、廃棄時の生分解性)。しかしエコロジカルであることは本来消費生活と相反することが多いはずである。新 たに物を作らない、買わない、よってゴミを出さないという姿勢はほとんど 無条件にエコロジカルである。

「tilt」において、私はエコロジカルな「もの」ではなく「姿勢」に関してのデザインをしたいと思いました。私達の意識に直接働きかけるような仕組みを デザインして提案したいと。何が重要なことなのか、考えるべきときに考えることをうながすデザイン。
テーマに選んだのは部屋の入口に必ずある照明のスイッチです。省エネルギーの観点からプラクティカルな重要性を持つとともに、シンボリックな意味も狙いま した。このデザインで、環境を大事にしようという気持ちにスイッチが入ると言うような。

部屋へ入る際、私達はほとんど無意識に電気のスイッチを入れます。それも歩く動作を止めることなく、無意識な一連の動きの中でそれを行います。この動きの 流れに一瞬の淀みが生じれば、スイッチを入れる前に何回かに一回の「オン」は回避されるでしょう。「tilt」ではスイッチをオンにするためにプレート自 体を回転させます。これは歩きながら、通りすがりにすることは無理な動きです。また、シーソータイプのスイッチはオンとオフの時の外観に差がなく、これが つけっ放しの罪悪感を減らす一要素であると私は考え、オンの時の「tilt」は首をかしげているような状態になるようにしました。

でも本当に重要なことはそこで節約されるいくばくかの電気より、普段の生活の中で少しずつ、エコロジカルな暮らし方についての意識がこれをきっかけとして 根付いていくことです。

【設計】 橋本建築スタジオ